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Y combinator Class Note

Y combinator Class Noteは、スタンフォード大学でYcombinatorが行っている「スタートアップのはじめかた(http://startupclass.samaltman.com/)」の授業動画から日本語訳を載せていきます。翻訳・掲載の許可はY combinatorのサム・アルトマンさんからもらっています。フィードバックはこちらまで ニア classnotefeedback@gmail.com

スタートアップのはじめかた: アイデア・プロダクト・チーム・実行 Part I

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スタートアップのはじめかた: アイデア・プロダクト・チーム・実行 Part I




CS183Bへようこそ。私は、YcombinatorでPresidentを務めるサム・アルトマンです。実は、9年前は私もスタンフォードの学生でした。起業するために退学して、そのあと数年は投資家として活動しています。




Ycombinatorに入ってからの9年間はどうやってスタートアップを始めるかというテーマだけ教え続けています。実際のところ、教える内容の殆どはスタートアップに専門的な知識だったり、実学的なものばかりです。ただ、残りの30%ほどのことは誰にでもあてはまり、非常に役に立つ知識です。そこで、その30%だけでも多くの人に役に立ててもらおうという目的でこのクラスを開講しました。

今までYcombinatorで長く教えてきましたが、全てオフレコでした。ただ、今回初めて動画として残るということなので、講師陣はYcombinatorで講義しているなかでも精鋭を集めてきました。

Ycombinatorには、今までに720のスタートアップへ投資をしてきた実績があり、行なっているアドバイスのほとんどは間違っていないという自信があります。申し込んでくる全てのスタートアップに投資することはできませんが、全てのスタートアップが役立てられるようなアドバイスができればいいと考えています。今回開く20の講義のうち、講師陣には17を担当してもらい、私は3つの講義に登壇します。

登壇してもらう講師陣の全員が今までに1000億円以上の市場価値をもつスタートアップに関わっています。講義の内容は空想や仮定ではなく、実際の経験に基づくものです。

また、この講義は、起業に関心がある学生向けに行ないます。特に、自ら起こしたビジネスを急成長させ、大企業をつくるという目標がある人を歓迎します。

講義内容の殆どは、もしかしたら他のケースでは当てはまらないかもしれません。大企業やスタートアップでない会社で同じことをしようとするとうまくいかないかもしれません。ただ、とても刺激的だと言えます。私はスタートアップという働き方は大きな可能性だと考えていますし、理解することに大きな意味があると思います。ただ、スタートアップが一般的な会社とは違うということを念頭においてください。

さて、今回と木曜日の2つの授業を通して私が講義する内容について話しましょう。私から話すのは、スタートアップの可能性を最大限に広げ、成功させるための4つのポイントについてです。他の講師陣にはその4つのポイントを掘り下げて講義してもらうことにしました。




それでは、早速4つのポイントについて紹介します。1つ目は、優れたアイデア。2つ目は、優れたプロダクト。3つ目は、優れたチーム。最後は、優れた実行能力です。ひとつひとつ意味がよくわかるように説明していきたいと思います。

優れた4つのポイントを持っていても、失敗する可能性はあります。だから結果的に必要なのは、「アイデア x プロダクト x チーム x 実行能力 x 運」だと言えます。運というのは、0から1万までのランダムな数字みたいなものですが、4つのポイントさえ抑えておけば運もコントロールすることができます。いつかは成功を収める機会がまわってくるものです。

スタートアップの魅力的なポイントは、誰でも参加する余地があることです。あなた達学生のように若くて経験がなくても大丈夫です。もちろん、年をとっていて経験がありすぎても大丈夫です。

また、経験が乏しくて無名なことは多くの労働環境では弱点になりがちですが、スタートアップをする上では大きな財産になり得ます。

本題に入る前に話しておきたいのは、スタートアップを始める理由についてです。クラスを開いておいて言うのは難ですが、この講義の「スタートアップのはじめかた」というテーマ自体に少し躊躇すらしています。というのも、スタートアップは、スタートアップをしたいという理由だけで始めるべきではないからです。

例えば、スタートアップを始める理由が単純に金を稼ぎたいからというだけなら、もっと他の簡単な方法をとるべきです。スタートアップに関わった人間が口を揃えて言うのは、どれだけ道のりが険しくて厳しいものだったかということに尽きます。ですから、スタートアップを始める前には2つの理由が必要です。ひとつは、自分しか目の前にある問題を解決する能力のある人間がいないからということ。もうひとつは、スタートアップを始めるのがその問題を解決するひとつだけの方法であるからということです。

そういった特別な情熱を持つのが最初で、スタートアップという手段をとるのは2の次です。Ycombinatorで成功した全てのスタートアップはこのルールに則っています。

今日の講義の後半を担当してもらうFacebookとAsanaの共同創業者であるダスティン・モスコヴィッツには、そのスタートアップを始める理由について詳しく話してもらいます。

実際、クラスを開講することになって多くの注目を浴びたことに驚いています。せっかくなので、スタートアップをするべき理由については特に時間を割いていきたいと考えています。

優れたアイデア



スタートアップを成功させる為に重要な4つのポイントの最初のひとつは、優れたアイデアです。

最近になってよく言われているのは、アイデアは問題ではないということです。実際、スタートアップのアイデアだけに時間を取られすぎるのはよくないです。

本当はすぐにアイデアを実行に移すべきです。次から次へとアイデアを壁に投げつけて、何がうまくいったかだけに集中するべきです。価値があるのかとか、うまくいくのかとかに時間をかけるべきではありません。実行したうえでのPivot(軌道修正)は、もっと歓迎されます。Pivotすればするほどよいと言われています。

アイデアを実行に移すべきというのは全く間違っていません。物事は全く予期できない形で変化していくし、想像していなかったことにプロダクトを持って初めて体験できることもあるからです。

優れた実行能力を発揮することは、優れたアイデアを生むよりよりも10倍重要で100倍難しいですが、スタートアップを始めた時点でもう時計の振り子は動き出してしまっています。

イケてないアイデアはどこまでいってもイケてないし、ピボット至上主義はあてになりません。イケてないアイデアを実行すると、失敗の量産機になってしまいます。

もちろん例外はありますが、ほぼ全ての優れた企業はピボットではなく優れたアイデアをもって生まれています。ピボットの成功例に注目すると、アイデアは全て創業者自身が欲していたものであり、急場しのぎのアイデアではないことがわかります。

ブライアン・チェスキーのAirbnbの着目ポイントは、借家に余ったスペースがあったにもかかわらず、家賃を払えなかったことでした。一般的にピボットに着目すると、ほとんどの企業が大きくなることはありません。

私自身、アイデアは重要ではないと考えていた時期もありますが、今思えば間違っていました。アイデアと一口にいっても色々な要素で構成されています。市場のサイズや成長率、企業の成長戦略や障壁戦略など挙げればきりがありません。

アイデアが優れているか判断するときは、プロダクトだけではなくこれら全ての要素について塾考する必要があります。もしうまくいく算段が立つなら、10年をつぎ込んでその先の長期に賭ける価値、また参入障壁の作り方について考えぬく価値があると言えます。

考え抜いて生まれたプラン自体がダメだったとしてもプランを考え抜くこと自体はすごく価値があり、これは最近のスタートアップに欠けているものだと考えています。他の業界では評価を得ることは難しいですが、長期に渡って考えることはスタートアップだけについていえばすごく理知的なことです。考えぬく力をつければ、後に活かすことができるようになるはずです。

ただ、アイデアというのは広がっていくもので、またそれに向かえば向かうほど壮大になっていくものだということを覚えておくべきです。なにも現時点から世界制覇までの一つ一つの要素について全て網羅しておかなければ、スタートアップを始めてはいけないと言っているのではありません。ただ、スタートアップを始める核心になる何か、すごく面白い方法でそれを推し進めていくことができる原動力を見つけておくべきです。

次に、若い創業者に向けてどんなアイデアを考えればよいのかについて話します。みんなが考えるべきなのは誰も真似できないビジネスです。これは優れたアイデアを生むためには重要な要素です。



重要なことなのでもう一度繰り返しておきます。アイデアが一番にあるべきで、スタートアップという手段は二の次です。打って出るべきアイデアでなおかつ自分が優れていると感じるものを思い浮かぶまでスタートアップを始めるのは待つべきです。

また、複数のアイデアから一つを選ぶことに迷っているみんなにも言いたいことがあります。もしうまくいきそうなアイデアがいくつかあるなら、失敗するケースがどうしても思い浮かばないものをえらぶべきです。

そうすると、聞こえてくるのは「本当に好きなアイデアを思い浮かぶまでスタートアップに飛び込むのは待つ」という言葉ばかりです。



どんなアイデアが優れているのかということについて、違う側面から見てみましょう。優れた企業は、全てなんらかの使命に基づいているものです。重要な使命を共有していないスタートアップが従業員に高い意識を持たせ続けて成功へ導くのは難しいことです。そもそも、重要な使命を持っていなければ、優れたアイデアとは言えないことが多いです。

重要な使命を持つことの一番のポイントは、自分自身をスタートアップに献身させられることだと言えます。

もし自分の作るプロダクトを信じることができないなら、いずれはプロダクトに向き合うことをあきらめてしまうことになります。重要な使命を果たすという気概がないなら、スタートアップで経験する辛さに耐えることはできないでしょう。

多くの起業家を見るなかでも、特に学生には決まった傾向があるようです。みんな自分たちのスタートアップで2〜3年は継続して働き、その後は本当に情熱を持てる何かを仕事にしていくと何となく信じています。ただ、これがうまくいくことは絶対にありません。大抵イケてるスタートアップというのは、10年間は継続します。

そして、重要な使命をもったスタートアップであれば、企業の外の人が助けてくれる機会が増えます。社会に貢献できる優れたアイデアであればあるほど、共感する人を多く引きつけられます。

このことから、ありふれたアイデアの簡単なスタートアップを始めるより、重要な使命を持った一見難しいスタートアップを始めることの方が簡単になるという逆説的なことがよく起こります。多くの人々にとって、これは理解するのに時間がかかるものです。

使命を果たすためにスタートアップを選ぶことがとても重要だということをここでもう一度強調しておきます。

新たな知見を持たずにただ既存のアイデアを真似するだけのありふれた企業は、社外の人々に感動を与えられないだけではなく社内の人々に成功するまで貢献しようとさせる求心力も持つことができません。

来週は、ポール・グラハムが講師として「スタートアップの始め方」というテーマの講義を行います。このテーマは創業者にとっては命題です。ただ、私は、練習すれば上達することが可能な者だと信じています。このテーマに向き合うための努力は間違いなく財産になるでしょう。

優れたアイデアを生み出す過程の中で一番難しいのは、一見くだらないと思えるアイデアが本当は優れたアイデアだと見抜くことです。サーチエンジン市場を独占する1位から12位までのポータル機能をすべて取り除いた検索エンジンだけのウェブサービスが現れた時、人々は見向きもしませんでした。

検索する行為自体に魅力を感じる人はおらず、ポータルサイトの情報量に価値があると信じられていた時代がありました。

市場に10番目に現れたSNS戦略はひどく避難されました。彼らのターゲットは、広告代理店にとって魅力のない貧しい大学生限定だったからです。MySpaceが独占している時代に誰が大学生を顧客にしようと考えたでしょうか。

「他人の家のソファーを寝床として紹介するサービス」は響きだけでひどいアイデアだと判断されました。

これらすべて最初はひどく避難されましたが、結果的にすばらしい評価を得ています。聞こえがいいサービスはみんなが始めているものです。




また、5回目の講義では、ピーター・ティールを呼んで市場を独占する方法について講義をしてもらいます。みんな市場を独占できるアイデアが求めていますが、さまざまな競合がいる中で大きな市場を一気に制覇することは一筋縄では行きません。まず始めに取りかかるべきなのは、小さく、急激に成長するマーケットを見つけることです。これは、優れたスタートアップのアイデアが最初はすごくひどく聞こえることの原因でもあります。

「今はこの限られたグループの中の少数のユーザーがプロダクトを利用してくれたが、将来的にはグループの全員が利用することになるだろう。ゆくゆくはグループの外のみんなが使いたがるプロダクトが出来上がる。」こんな風に予想を立てることができるアイデアが本当に優れていると言えます。


そして、アイデアを練る中で重要なのは、自分のアイデアに確信を持ち、他人の否定を無視することです。この線引きはとても難しいものです。あなたの確信が正しいこともあれば、あなた自身が本当に狂っていることもあるからです。ただ、優れたアイデアに共通するのは、人々はなかなか賛同してくれないことです。むしろ賛同されないことを誇りに思うべきです。彼らはあなたのアイデアの競合になり得ることはありません。スタートアップのアイデアを人に話すべきでないというのは間違いです。本当に優れたアイデアを聞いたとき、周りの人は盗もうという発想にならないからです。

つまり、みんなが目指すべきなのは「ひどく聞こえるけど本当は優れている理由があるアイデア」です。または「狂っているように思われる反面、実は間違っていないアイデア」です。そして、最初は小さなマーケットでもいいからほかの人が取り組んでいないアイデアを試すべきです。起業家の卵が陥りがちな間違いは共通していて、みんな最初のプロダクトとはすごく聞こえがよいものでないといけないという認識があります。そうではなく、最初は小さくて限られた市場にだけ特化しているべきでそこから開拓していけばいいのです。大企業は全てそうしておおきくなっていった実績があります。

人は関心を持たないけれど本当は正しいという方向を目指すべきです。聞こえは悪いけど本当は価値があるというアイデアを練るべきです。

それから、アイデアを練るときは、その市場がどの程度成長するかという要素に時間をかけておくべきです。10年以内に巨大になり得る市場を押さえておく必要があります。ここに投資家達が起こしやすい間違いが集中しています。投資家達は、スタートアップ自体がどの程度成長するかということに気を取られすぎて、市場の成長には目もくれません。これは、エコシステム全体に影響を及ぼす致命的な間違いです。

私が投資を行うときに注目するのはスタートアップが挑戦する市場の成長率です。今の大きさは重要ではありません。また、その市場にピークが訪れる契機に関しても注目しています。つまり、今は巨大な市場dえすが成長率がそれほどでないところへ挑戦するスタートアップと、小さな市場ですが成長率に期待できるところへ挑戦するスタートアップがあれば後者に投資することがよくあります。

成長率が期待できる小さな市場では、顧客が日常的に問題に対する解決策を模索しています。こういった状況では解決策になるプロダクトはすぐに受け入れられ急激な成長を遂げます。

ところで、学生であるみなさんは、学生であるというだけでほかより優れているという点が2つあります。1つは、どの市場がこれから伸びそうかという問題に関して年を重ねた人間に比べてみなさん学生の直感が優れた答えを導きだすことが多いということです。

ただ、需要がない市場に開拓していくことはできません。学生は特にここを理解するのに時間がかかるようです。スタートアップを立ち上げることへできますが、それだけで市場をかえることはできません。市場へ開拓しようとする前に、熟考する時間を十分にとり少なくとも挑戦する市場が存在することだけに関しては明確にしておくべきです。

「波に乗る」、「ブームに乗る」、「尻馬に乗る」など急成長していく市場へ便乗することの言い回しはいくつかありますが、言い方は何であれスタートアップを立ち上げるときは伸びていく市場についていくべきです。

スタートアップを生み出すときには、少なくともこうした追い風を味方に付けておくべきです。世の中の情勢をみると、追い風は少しずつ増えていることがわかります。「ソフトウェアが世界を飲み込む」と言ったマーク・アンドリーセンの世界観が現実のものになっています。優れたアイデアは周りにあふれているので、本当にあなたが使命感を持てるものを見つけるべきです。



また「なぜ今始めなければならないのか?」という問いについても、深く考えるべきです。これはセコイアキャピタルのパートナーがよくする質問です。なぜ今このタイミングでこのアイデアを実行する必要があるのか。なぜ2年前ではまだ始められなかったのか、なぜ2年後では遅すぎるのか。私が関わってきたすべての優れた起業家には、優れたアイデアはもちろん、この問いに対するすばらしい答えがありました。もしこの問いに答えることができないのなら、あなたのアイデアが本当に優れているかについても答えることはできないでしょう。

もしあなた自身がスタートアップの顧客であれば、アイデアを生み出すためにはベストの環境です。または非常に顧客に近い存在であれば、一番最初のプロダクトになにが必要かを誰よりも深く理解することができます。もしあなたが必要としておらず、ほかの誰かが必要だと言っているものを作るのは、顧客の近くにいられるという貴重な機会を逃している点でもったいないと感じるべきです。一度は、顧客のオフィスで働いてみるべきです。もしできないなら顧客へ一日にすくなくとも数度話をする機会をもつべきです。

次に、優れたスタートアップを見分けるために非常に重要な要素をもう一つ紹介します。優れたスタートアップには説明がいりません。長々と説明しなければいけないということは、プロダクトが複雑すぎるというサインです。最小限の言葉でビジョンを共有できるアイデアを練るべきです。

最も優れたアイデアは2つのどちらかであることが多いです。一つは、既存の企業とは一つだけ極めて重要な違いを持つアイデアがあること。Googleは優れたサーチエンジンを持ちながら、他のようなポータルサイトとしての働きを一切取り除いています。もう一つは、SpaceXのように全く新しいアイデアであることです。

失敗する企業とは、既存の企業のコピーキャットであるか、またはそれに近いほどの取るに足らない違いしかないものです。既存のプロダクトのデザインを洗練させたことだけが売りのものなどは大抵うまくいきません。



学生であることの優位性をもう一度強調します。それは、あなた達自身が新しい観点や技術をもたらす存在であることです。そうでない人たちが、新しいアイデアをすんなり受け入れるようになるには少し時間がかかります。

学生のうちにしておくべきのは、新たな知識を得ることに時間を費やすことです。学生の時にもっと勉強すればよかったと嘆く人は後をたちません。もう一つは、将来の共同創業者と会っておくことです。隣に座っている学生と会社を興すことができる環境にいるすばらしさを認識することです。

Ycombinator全体として繰り返して強調しているのは、学生のうちに未来の共同創業者を見つけておくことです。これに関しては、すぐにスタートアップを始めるべきだということよりもより重点を置いて話しています。

50 Centのインタビューから引用して、優れたアイデアとはなにかというテーマを締めさせてもらいます。これは、彼がビタミンウォーターについて聞かれたときの答えです。


人は何かを作ったり表現したりするとき、観客の方を見ていないことが多い。自分がやりたい放題してからそれを見ていてくれる観客を探し始めるんだが、そうじゃない。観客の渇いた欲求に注目するべきなんだ。観客を覆い尽くす流れを作るべきなんだ。観客が求めているものに注目すれば、彼らの渇きをうるおすことができる。
-50 Cent


スクリーンにあるから読み上げませんが、この引用は市場のニーズを把握し、顧客が求めているものについて考えを深めるのに非常に重要なものです。多くの人にはこの考えが欠けています。特に、多くの学生にこの考えが欠けています。

この授業では、このことさえ覚えていればいいです。第一に市場のことを考えることさえできれば、スタートアップを始める人々との中で頭一つ抜けることができます。Ycombinatorへのアプライの中で最も散見される間違いは、みんな市場を第一に考えることができていないことです。

優れたプロダクト



次は優れたプロダクトを作ることについての話に移っていきます。プロダクトの定義の中には、カスタマーサポート、版権に関しての説明も含まれます。ここには、顧客が関わるものなら何でも含まれます。



優れた企業を作るためには、優れたアイデアを優れたプロダクトに変える必要があります。大変な苦労を必要としますが、ここすごく重要で、一番楽しいところです。

優れたプロダクトというのはそもそもこの世にないものなので、何を作るべきかをアドバイスするのは難しいです。ただ、優れたプロダクトをどのようにして作るべきかについてはたくさんの共通項があるのでアドバイスができるでしょう。

起業家にとって最も重要なのは、なんとしても企業が優れたプロダクトの開発できるように導くことです。優れたプロダクトが出来上がるまではその他のことは全く問題になりません。
本当に成功したスタートアップの起業家が駆け出しの頃何をしていたかというと、決まってコンピューターの前に座ってプロダクトの改善に努めているか、顧客と話し合っているかのどちらかになります。

本当にその通りで、それ以外やることはありません。もしその他のことに多くの時間を割いているなら、本当にプロダクト以外に時間をかける必要があるべきかどうか考え直すべきです。

資金調達、PR、採用、営業活動などの多くの問題に対して時間をかけようとする起業家がよくいますが、優れたプロダクトさえあればこれらの問題は簡単に解決できます。

Ycombinatorで起業家達に繰り返しているのは5つだけです。優れたプロダクトを作ること、ユーザーと対話すること、適度な運動、食事、睡眠です。

創業者としての仕事は、ユーザーが愛するプロダクトをつくることです。これをしないで成功したスタートアップはすごく少ないです。聞こえだけがいい優等生スタートアップが失敗するのはみんなユーザーが好きなものを作ることができないからです。



ターゲットを絞らずなんとなく需要があるものをなんとなく作るだけのスタートアップは間違いなく失敗します。失敗する理由もわからずに失敗していくのがこういったスタートアップの悪いところです。



Ycombinatorの候補生によく話す内容は似通っていて、まず少数でいいからユーザーが愛するものをつくるべきでそこから大多数のユーザーへとアプローチしていくべきです。もちろん最初から大多数のユーザーが気にいるものを作れれば言うことはありませんが、多くのスタートアップにとってなかなかできることではありません。

実際にスタートアップを始めるなら2つのうちどちらか1つをターゲットにするべきです。大多数のユーザーをターゲットにして彼らが少し気にいる程度のものをつくるか、少数のユーザーをターゲットにして彼らが愛してやまないものをつくるかです。

この授業で覚えて帰るべきことはひとつだけです。作るべきプロダクトは、少数の人々が愛してやまないものにするべきだということです。大多数の人々の関心を引こうとするよりも、プロダクトを愛する人々の数を少しずつ増やしていくほうがずっとカンタンです。

このポイントを抑えていても、まだまだ間違いを犯すかもしれません。ここでつまづいていているならおそらく失敗するでしょう。スタートアップを始めてプロダクトが完成するときまでは、このポイントだけ抑えておけばいいでしょう。

「(学生)もう一度説明してもらえますか?」

もちろん。例えばスタートアップを始める時にどんな選択肢があるかという話で考えてみましょう。最も優れたアイデアは、最初から多くの人々が本当に愛してくれるものです。ただ、実際に最初からそんなアイデアが浮かぶことはありません。もしそんな機会があったならGoogleかFacebookがすでに行なっているはずです。

作ることができるプロダクトにはある程度制限があるもので、2つのどちらかの道を選ばなければいけません。ひとつは、大多数の人々がなんとなく好きだと言ってくれるプロダクト、もうひとつは、少数の人々にとても愛されるプロダクトです。

ユーザーから得られる関心の総量を取って比べてみれば、2つのどちらを選んでも同じになります。また、スタートアップが最初のプロダクトをもってして世界に与えられる影響というのはある程度限られているものです。関心を得る量が同じという点ではどちらも等しく見えるので、2つのどちらを選ぶかはスタートアップにとって命題になっています。

ただ、スタートアップを長く見てきたなかで私が言えるのは、2つは全く違うということです。少数のユーザーに圧倒的に支持されるプロダクトのほうが、大多数のユーザーから少しずつ関心を得るプロダクトに比べて成長しやすいです。。一度ある一定の人々の心を掴んだなら、そこからは共感してくれる人々の数を増やしていくだけでいいのです。

ただ、人々からあまり関心を得られなかったりした場合、そこから共感してくれる人々の数を増やそうするのは難しいです。

結論としては、まずごく少数の人々が愛するだろうものをスタートアップとして始めるべきだということです。



また、そうして自分が始めたスタートアップがイケてるかどうかについて見分ける方法が一つあります。周りで自分のプロダクトが話されているかどうか聞き耳をたてることです。これは消費者向けのプロダクトでも企業向けのプロダクトでも同じことが当てはまり、本当に優れたプロダクトは口コミで自然に広まっていきます。

反対に自分の始めたスタートアップがイケてないかどうかを見分ける方法もあります。それは自分が何を話しているか振り返ることです。プロダクトが成長していないことを正当化していたり、大企業との提携でゆくゆくは成長できると周りに話していたりするなら、危機感を持つべきです。
営業やマーケティングは非常に重要な要素なので後の講義で話す時間を持ちますが、それらは本当に二の次の話です。最初の段階で自然に市場に受け入れられないようなら、プロダクトにまだ改善の余地があります。

優れたプロダクトがあって初めてグロースハックの話をするべきです。プロダクトを用意するまで他のことは心配する必要はありません。優れたプロダクトを完成させることよりも優先すべきことはありません。

プロダクトを用意する前からグロースハックの仕組みに頭を悩ませるのは時間の無駄です。急成長する企業のほとんどはプロダクトの素晴らしさが口コミで広まっていくのが常です。



最後に勝つのは優れたプロダクトを持ったスタートアップです。
競合が資金調達をしたことや、彼らのロードマップについてくよくよ考える必要はありません。放っておけば彼らもすぐに失敗するからです。ただ、競争の中で失敗していくスタートアップというのはあまり例がありません。多くのスタートアップが失敗する理由は実は一つだけで、それは結局ユーザーが愛するプロダクトを作り上げることができないせいです。ほとんどがプロダクト以外に時間をかけるために失敗していきます。プロダクトのことにだけ集中して、他のことは気にしないでおくべきです。

ユーザーが愛するプロダクトをつくるためのアドバイスはもうひとつあります。それはシンプルなものから始めることです。優れたプロダクトもシンプルな要素だけに集中すればずっと始めるのが簡単になります。

最初に用意するのは、考えられるなかで一番重要な要素だけを持つ小さなプロダクトでいいです。複雑な構造を持った完成形のプロダクトはひとまず忘れて、その表面をなぞるだけのプロダクトか始めてみましょう。

既に成功した企業がどんなところからスタートを切ったか見てみると非常に面白いです。成功したサービスやアプリは使い始めるのがカンタンでとてもシンプルな機能だけを持っているのが一般的です。Facebookのβ版は笑えるほどシンプルな機能しかありませんでした。

Googleもβ版では、無造作に置かれたテキストボックスが1つと2つのボタンだけでした。ただ、シンプルだった故に人々に気に入られ結果的に成功しています。たくさんスマートフォンがある中でiPhoneが成功したのも、iPhoneがシンプルでそこを人々が気に入ったからです。

シンプルなプロダクトを勧める理由はもうひとつあります。それは1つのことを洗練させるのに集中できることです。人々から愛されるためには、プロダクトの洗練は必要不可欠です。
成功企業の創業者達が自分のプロダクトについて語るときよく聞かれのは「狂ってる」という言葉です。プロダクトのとても小さなディテールや、カスタマーサポートに狂ってると思われるほどにこだわることで、アイデアを形にすることができるのです。

Ycombinatorで成功している企業に関していえば、PagerDuty(http://www.pagerduty.com :システムダウンから復帰までの時間を短縮するためのSaaSプログラム)を実装しています。ユーザーからのバグ報告がくれば深夜でも飛び起きて一時間以内に対応しています。

スタートアップはこういったことを早い時期から行っています。プロダクトにバグがあれば飛び起きてでも修正します。そもそも、バグのあるプロダクトを作らないし、あったとしてもすごく短い時間で修正します。こういった姿勢を「狂ってる」といいます。

また、フィードバックを定期的に受け取るためにもユーザーの助けを借りる必要があります。とはいっても、そう簡単に手を貸してくれるユーザーはいないので自分たちで数人を最初に集めて来なければいけません。Googleのアドセンスを使って初期からユーザーを手に入れようとするのは良くない手です。



たくさんでなくていいので、毎日フィードバックをくれるユーザーを数人集めておくべきです。彼らがプロダクトを愛するようになるまでプロダクトを改善します。GoogleAdwordsで探すのは良くないアイデアですが、世界中から数人のユーザーを探してきて、常にフィードバックをもらえるようにしておくべきです。

最初のユーザーの集め方については、Pinterestの創業者であるベン・シルバーマンのおもしろいエピソードがあります。Pinterestを発表してみんなに散々こき下ろされたベンは、すぐコーヒーショップに向かいました。そこでコーヒーを飲んでいる知らない人達を相手にPinterestのユーザーになってくれるか直接リクルートしていったのです。

また、彼はAppleStoreを訪れて展示されているMacのブラウザのトップを全てPinterestのページに設定して回りました。人々がブラウザに開かれたPinterestに気付いて「なんだこれ?」と言うか、店員が彼を追い出すかどちらかになるまでやり続けました。これは、スケールしない時期に取り組むべきことの良い例です。また、このことについて書かれてあるポール・グラハムのエッセイはぜひ読んでください。 

まずは、なにより特定の少数の人々を捕まえましょう。そして、ユーザーに自分のプロダクトを好きになってもらうことに集中しましょう。ユーザーのことを理解し、その声に耳を傾ければ、彼らが実は話したがっているということに気づくでしょう。

仮に自分自身のためにプロダクトを作っていたとしても、外からのフィードバックを聞けばユーザーがどんなプロダクトにはお金を出したがっているか予想が立つはずです。フィードバックを聞いて、彼らが欲しがっているプロダクトを作るのに全力を注ぐべきです。プロダクトを好きになれば、彼らは自然と口コミの中心になってくれるはずです。



フィードバックを得たら次にすることは、社内でプロダクトに反映させるまでの仕組みを作ることです。プロダクトを改善したらまたユーザーの前に見せ、フィードバックをもらう作業を繰り返していくべきです。ユーザーが何がすきで、何が嫌いなのか探り、彼らが使う様子を記録します。また、どんなプロダクトならお金を払ってもいいか聞くべきです。

もしプロダクトがなくなったらがっかりするかどうか聞きましょう。他にどんな機能があればプロダクトを他の人に勧めるかどうか聞きましょう。それから、もうプロダクトを人に勧めたかどうか聞いてみましょう。

そしてこのフィードバックと改善の繰り返しは可能な限り続けていくべきです。もし週に10%だけでも改善できたなら、瞬く間に大きな実績に変わるでしょう。ソフトウェアスタートアップの優れたところは、フィードバックからプロダクトの改善までの速度に掛かっていると言っても過言ではありません。

優れた企業というのはこの改善が数時間単位で行われるもので、この速度の基準は企業がどれほど大きくなっても保ち続けるべきです。大企業はもちろんスタートアップの駆け出しの頃にはこれはとても重要なものです。

ここには特別な魔法はなく、全て可能なことです。必要とされているのは努力だけです。ここさえ間違えなければ結果的に優れたプロダクトを生み出すことができるはずです。

優れた起業家は、スタートアップの駆け出しの頃はユーザーと直接対話します。営業活動やカスタマーサポートなどの業務を自ら行うことで、フィードバックからプロダクトの改善まで徹底するという企業文化を作っていくことができるからです。

スタンフォードの学生スタートアップがもつ事実として、彼らはユーザーに向き合うことをせず、営業やカスタマーサポートの人間をすぐに雇う傾向にあります。ここだけは自分たちで行うべきで、正しいやり方はこの一つだけです。



改善までの速度には決まった指標を用意しておいてどれだけ時間がかかっているか向き合い続けるべきです。企業の成長の度合いはCEOの決めた指標が基になっています。もしインターネットサービスを作るスタートアップを立ち上げるなら他のことは忘れてプロダクトに集中しましょう。

他のことを話す必要なんてありません。社内の誰にも他のことを話させる必要はありません。重要なのは、アクティブユーザーの成長率、アクティビティレベル、定着率、利益率。これら本当にスタートアップにとって問題になることだけ話し合えばいいです。ネットプロモータースコアなんてどうでもいいです。この情報をもとに、自分たちが正しい方向へ進んでいるかどうかについて話しあうべきです。スタートアップの命とは成長率であり、成長率は優れたプロダクトかどうかを確かめるの一番の指標です。

そろそろどのようにして優れたプロダクトを作るかというテーマをおさらいしてこの講義を終えたいと思います。もう一度強調しておきたいのは、今日の講義の内容を正しく理解しておくことです。この内容が正しいとわかる時まで忘れている可能性もありますが。ただ、優れたプロダクトを作ることの良い側面は、スタートアップにとって一番楽しい時期だということです。



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